「墓じまい」と聞くと、なんだか寂しい気持ちになる方もいるかもしれません。しかし、それは決して終わりではなく、新しい形の供養への始まりです。
この記事では、墓じまいを検討されている方に向けて、手続きの流れや費用、そして新しい供養の形など、知っておきたい情報をわかりやすく解説します。
「墓じまい」について不安に思っている方、ぜひ最後まで読んでみてください。
墓じまいという決断をすることは、多くの人にとって感情的にも実務的にも難しい選択です。家族や親族との話し合い、法的手続き、そして費用の面など、さまざまな要素が絡み合います。この記事では、「墓じまい手続きと費用|後悔しないための5つのステップ」について、詳しく解説していきます。墓じまいを考えている方々が、適切な決断をするための参考にしていただければ幸いです。
墓じまいを決意される理由
墓じまいの増加背景と高齢化社会の影響
近年、墓じまいを検討される方が増加しています。その背景には、少子高齢化社会の進展が大きく影響しています。
- 継承者の減少: 少子化が進み、お墓を継ぐ人がいない家庭が増加しています。
- 遠隔地の墓の管理困難: 都市部への人口集中により、実家のお墓が遠方にある場合、管理が難しくなるケースが増えています。
- 経済的な負担: 墓の維持費や管理費は、年々上昇傾向にあります。経済的な負担を軽減したいというニーズも高まっています。
- ライフスタイルの変化: 核家族化が進み、従来のような大勢で墓参りする習慣が薄れてきました。
- 価値観の変化: 個人の価値観が多様化し、従来の墓の形にとらわれない新しい供養の形を求める人が増えています。
これらの要因が複合的に作用し、多くの方が墓じまいを検討するに至っています。
高齢化社会における墓じまいの増加
高齢者の墓の管理負担と家族間の意見の相違
高齢化社会の進展に伴い、墓の管理は高齢者にとって大きな負担となっています。
- 体力的な負担: 年齢を重ねるにつれて、遠方にある墓地への移動や、墓掃除などの体力仕事が困難になるケースが増えています。
- 経済的な負担: 墓の維持費や管理費は、年々上昇傾向にあります。高齢者にとっては、経済的な負担が大きいと言えるでしょう。
- 健康問題: 病気や怪我により、墓参りが困難になる場合もあります。
また、家族間での意見の相違も、墓じまいを検討する要因の一つです。
- 世代間の価値観の違い: 若い世代は、従来の墓の形にとらわれず、より自由な供養の形を求める傾向があります。
- 相続問題: 墓の継承を巡って、兄弟間や親族間で意見が食い違うことがあります。
- 居住地の変化: 都市部への人口集中により、実家のお墓が遠方にある場合、管理の責任を誰が負うかという問題が生じます。
これらの問題が複合的に作用し、家族間で話し合いが難航し、結果的に墓じまいを検討するケースも少なくありません。
高齢化社会が進む中で、墓じまいの需要が増加している背景には、いくつかの重要な要因があります。
その一つが高齢者の墓の管理負担の増加です。
高齢になると、墓の管理や維持にかかる体力や財力が限られてくるため、家族や親族にとっては負担が大きくなることがあります。
また、これに関連して家族間での意見の相違も増えています。墓の管理や供養方法についての考え方が異なる場合、墓じまいを選択することが家族内での合意形成を困難にする場合があります。
墓じまいのメリット・デメリット
墓じまいには、さまざまなメリットとデメリットがあります。メリットとしては、墓の維持費や管理の負担を減らせること、遺族の負担を軽減できることが挙げられます。一方で、デメリットとしては、伝統や文化に対する配慮や、先祖への敬意が問われることがあります。
メリット
- 経済的な負担軽減: 墓の維持費や管理費が不要となり、経済的な負担を減らすことができます。
- 精神的な負担軽減: 墓参りの負担から解放され、精神的な負担を軽減することができます。
- 新しい供養の形: 従来の墓の形にとらわれず、自分たちのライフスタイルに合った新しい供養の形を選ぶことができます。
- 家族間の円満: 墓の継承を巡るトラブルを回避し、家族間の円満を保つことができます。
デメリット
- 故人を想う気持ちとの葛藤: 故人を身近に感じられなくなるという不安や、故人に申し訳ないという気持ちを抱く方もいます。
- 手続きの煩雑さ: 改葬許可証の申請など、様々な手続きが必要となり、手間がかかります。
- 親族との意見の対立: 家族間で墓じまいについて意見が一致しない場合、トラブルに発展する可能性があります。
墓じまい後の新しい供養の形
墓じまい後、新しい供養の形としては、様々な選択肢があります。例えば、納骨堂やオンラインでの永代供養、樹木葬や海洋散骨など、個々の希望や状況に合わせた新たな供養方法が増えています。これらの方法を活用することで、より個別化された形で亡くなった人を偲び、供養することが可能です。
墓じまい後には、従来の墓の形にとらわれない、様々な供養の形を選ぶことができます。
- 樹木葬: 自然の中に遺骨を埋葬し、樹木で覆う方法です。自然の中で故人を偲ぶことができ、環境にも優しい供養方法として注目されています。
- 永代供養: 寺院や霊園で永く供養してもらう方法です。個人で管理する手間がなく、安心して任せられます。
- 海洋散骨: 海に散骨する方法です。広大な海に故人の魂を返すという、開放的なイメージがあります。
- 手元供養: 小さな骨壷やアクセサリーに遺骨を納め、自宅で供養する方法です。故人を身近に感じることができます。
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墓じまいの手順と注意点
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- 家族や親族との相談:墓じまいの意向を伝え、同意を得ます。
- 墓地管理者への連絡:お寺や霊園の管理者に墓じまいの意向を伝えます。この段階で、閉眼供養や檀家関係の取り扱いについても相談しておくと良いでしょう。
- 新しい供養方法の決定:改葬先や新たな供養方法(永代供養、散骨など)を決めます。
- 行政手続き:改葬許可証の取得が必要です。以下の書類を準備し、現在のお墓がある自治体に提出します。
- 埋葬証明書(現在のお墓の管理者から発行)
- 受入証明書(新しい埋葬先の管理者から発行)
- 改葬許可申請書(申請者本人が記入)
- 閉眼供養:お墓から遺骨を取り出す前に、読経などの儀式を行います。
- 遺骨の取り出しとお墓の撤去:改葬許可証が発行された後、遺骨を取り出し、墓石を撤去します。
- 新たな場所への納骨:選択した新しい供養方法に従って、遺骨を安置します。手続きの流れ(管理者への連絡、遺骨の取り扱いなど)
墓じまいの手続きは、一般的に以下の流れで進行します。
- 注意すべき法律や地域のルール
墓じまいを行う際は、以下の点に注意が必要です。
- 改葬許可証の取得:墓地、埋葬等に関する法律により、遺骨を移動する際は必ず改葬許可証が必要です。
- 地域ごとの規則:自治体によって墓じまいに関する規則が異なる場合があります。事前に確認しておくことが重要です。
- 墓地の返還手続き:お寺や霊園との契約解除や、使用料の精算などが必要になる場合があります。
- 期間の考慮:墓じまいの手続きは通常2〜3ヶ月かかりますが、状況によっては半年以上要することもあります。
- 時期の選択:お盆やお彼岸などの繁忙期は避け、天候の良い時期を選ぶことが推奨されます。
- 遺骨の取り扱い:遺骨の取り扱いには十分な配慮が必要です。専門業者に依頼することも検討しましょう。
墓じまいは法的手続きと感情的な側面の両方に配慮が必要な重要な作業です。十分な準備と関係者との丁寧なコミュニケーションを心がけることが、スムーズな墓じまいにつながります。
さらにわかりやすく!
永代使用権とは?
法律によって「墓地は普通の土地とは扱いが異なる」と定められています。
そもそも墓地は新しく購入するのではなく、永代使用権という権利を買うことになります。
また、お墓用の土地なので、ほかの用途として使うことは認められていません。
「永代使用権を購入したけど、やっぱりお墓を建てるのはやめた。物置にしたい!」は不可能です。
一定の区画の使用権のことです。
「お墓を建てる土地を購入した」というのは、永代使用権を所持していることを指します。
「土地を購入した」と言っても、所有権を持っているわけではないのです。所有権自体は寺院や土地の管理主が持っています。
永代使用権は、契約で明記されていない限り売却もできません。
「いらなくなったから誰かに売ろう!」は、不可能です。理由は、区画ごとに所有権を持たせて売買をすると、管理が煩雑になるからです。
土地を手放したい時は?:所有権者に返還する
個人で土地を売買することはできません。手放したい時は、所有権者に返還します。
返還時の注意事項が2つあります。
1つ目は、永代使用料は基本的に戻ってこないこと。
理由は、永代使用料は法律上「寄付」として扱われるためです。
「寄付は善意でするものなので、返還するのはおかしい」のです。
2つ目は、返還する時は更地にしなければいけないこと。
「土地を返したいので墓石も適当に処理しておいてください」は、できません。
墓石を撤去する必要がありますので、返還時には撤去費がかかります。
また、お寺を離れる場合は離檀料がとられることもあります。
契約する段階で「返還時にかかる料金」を確認しておきましょう。
墓じまいにかかる費用一覧表
墓じまいにかかる費用は、お墓の場所、大きさ、石材の種類、そしてお寺との交渉などによって大きく変動します。以下の表は一般的な費用の内訳と相場を示したものです。
費用項目 | 内訳 | 相場(目安) |
---|---|---|
墓地の撤去費用 | 墓石の解体、運搬、墓地の原状回復など | 10万円~30万円/㎡ |
石材の処分費用 | 墓石の種類や大きさによって変動 | 別途見積もり |
遺骨の移転費用 | 新しい納骨先への移転費用、手続き費用など | 5万円~10万円 |
宗教者への供養料 | 開眼供養、閉眼供養など | 3万円~10万円 |
寺への離檀料 | 寺によって異なる | 5万円~20万円 |
行政手続き費用 | 改葬許可申請、届出などの費用 | 1万円~3万円 |
その他 | 新しい墓地購入費用、永代使用料など | 別途見積もり |
「墓じまい」をせずにお墓を放置したらどうなるのでしょうか?
実家が遠方なので「お墓」を継げそうにない。墓じまいに費用をかけたくないなど「墓じまい」をせずにお墓を放置したらどうなるのでしょうか?
お墓を継げそうにないから、墓じまいをしたいと考えている人もいるでしょう。実家が遠方などの理由でお墓を継げない場合、墓じまいをせず放置していると、さまざまなトラブルに見舞われるかもしれません。
本記事では、墓じまいをしなかったらどうなるかについて解説します。墓じまいにかかる費用についても解説しますので、墓じまいを考えている人は参考にしてください。
墓じまいをしないことで起こり得る問題
墓じまいとは、お墓の撤去や解体などをして土地をさら地にし、所有権をお寺や霊園に返還することです。お金や手間がかかるため、墓じまいをせずに放置してもよいのではと考える人もいるでしょう。
しかし、株式会社ディライト(東京都新宿区)が実施した「『墓じまいしなかった場合、どうなるのか』に関する調査」(調査期間:2025年1月、調査人数500人)によると、「特に何も起きていない」と答える人が48.6%いる一方、さまざまなトラブルに見舞われた人もいます。
■お墓が放置され無縁墓となった
同調査によると、「お墓が放置され、無縁墓になった」と答えた人は21.6%いました。無縁墓とは、お墓の継承者がおらず一定期間管理料が支払われないお墓を指します。
無縁墓になったからといって、墓石が撤去されるとはかぎりません。しかし、墓地の管理者によって墓石が撤去されることもあるため注意が必要です。
■親族ともめた
同調査によると、「家族内でお墓の管理についてもめた」と答えた人は20.2%いました。
墓じまいをしないままでいると、家族や親族内で「墓じまいをするのか」「誰が墓の管理をするのか」といったことでもめることがあります。お金の問題や宗教の考え方の違いにより、仲が悪くなってしまったといったケースも多くあるようです。
■遺骨が合祀された
同調査によると、「遺骨が合祀され、知らないうちに撤去された」と答えた人は5%いました。
無縁墓となって墓石が撤去された多くの場合、遺骨は合祀墓に移されます。一度合祀墓に移ると個別に遺骨を取り出すことはほぼ不可能となるため、後からお墓を建てたいと思っても対応できなくなるケースがあります。
また、一部では寺院霊園から事前に撤去の連絡がなく、改葬や合祀される事例も報告されており、大きなトラブルに発展する可能性もあります。そのため、お墓や遺骨の管理状況については、定期的に確認することをおすすめします。
墓じまいにかかる費用
墓じまいにかかる費用は、総額で30~300万円程度とされています。それぞれの費用目安は以下のとおりです。
・墓石の撤去……1平方メートルあたり8~15万円
・お寺へのお布施代……3~10万円
・離檀料……0~20万円
・行政手続き……1000~1500円
・新しいお墓の準備……5~250万円
・お寺へのお布施代……3~10万円
なお、お墓のある場所が山奥である、施設の通路が狭いなどの場合、お墓の撤去費用は高額になります。また、新しいお墓の種類によって、費用に大きな差が生まれるでしょう。
墓じまいの費用が払えないときの対処法
墓じまいの費用は高額であるため、支払うことが難しいと感じる人もいるでしょう。しかし費用が払えないからといって放置すると、無縁墓になって撤去される恐れがあります。のちに撤去費用を請求されるケースもあるため、早めに対処するほうがよいでしょう。
本項では、墓じまいの費用を負担に感じる人に向けての対処法を解説します。
■費用をおさえる
墓じまいにおいて費用がもっともかかる部分は、新しいお墓の費用です。新しいお墓を建てずに散骨や手元供養を選べば、大きく費用をおさえられるでしょう。一般墓所を用意すると数十~数百万円の費用がかかりますが、散骨や手元供養であれば数万~70万円程度で利用できます。
■家族親族・寺院の住職に相談する
費用面が心配な場合は、家族親族に相談して費用面での協力を求めましょう。墓じまいをひとりで背負う必要はありません。管理元の寺院にも相談してみましょう。状況を説明することで、墓じまいに必要な費用について考慮してくれるかもしれません。
■補助金制度を利用する
無縁墓の増加を食い止めるため、墓じまいの費用について補助金制度のある自治体もあります。お墓がある自治体に補助金制度がないか確認してみましょう。
■分割払いやメモリアルローンを利用する
墓じまい費用は一括払いが理想とされますが、払えない場合は霊園や墓地管理者に相談して分割払いの可能性を確認しましょう。また、メモリアルローンなどの専用ローンを利用することも選択肢の一つです。
墓じまいは将来のための前向きな選択肢の一つ
墓じまいとは、お墓を撤去し、遺骨を別の場所に移すことを指します。少子化や高齢化により、お墓の管理が難しくなるケースが増えており、墓じまいを検討する家庭も多くなっています。墓じまいをせず放置を続けると、いつのまにか墓が撤去され遺骨が合祀されてしまう恐れがあります。
墓じまいは費用や手続きの手間はかかりますが、将来的な負担を減らすための前向きな選択肢の一つです。親族間でのトラブルの原因にもなるため、早めに墓じまいを検討するとよいでしょう。家族とよく話し合い、納得のいく方法を選ぶことが大切です。
出典
株式会社ディライト 「墓じまいしなかった場合、どうなるのか」に関する調査